メンタルヘルスケア なぜラインケアが特に重要なのか

メンタルヘルスケアの目的

近年、社会情勢や働き方も多様化する中で、仕事や職場環境などにストレスを感じている労働者の割合は50%以上と高い水準を推移しています。
さらに、仕事を原因とした精神疾患の発症や、自殺による労働災害認定なども増加してきておりメンタルヘルスケアの取り組みが急務とされていま。
メンタルヘルスケアは、全ての働く人々が、健やかにいきいきと働き続けることができることを目的とし、労働者が、身体的安全だけでなく心理的安全な環境で働くことができる仕組み作りをし、継続して取り組むことが求められます。
労働者が心身ともに健全であれば、モチベーションの維持向上が期待でき、退職や休職また生産性の低下など様々なリスクを回避することができます。
またメンタルヘルスケアに取り組んでいる企業として、社会的評価も向上します。

メンタルヘルスケアの概要

メンタルヘルスケアは4分類から構成されています。
①「セルフケア」労働者自身が自分をケアする。
②「ラインケア」現場の管理者が部下をケアする。
③「事業場内産業スタッフによるケア」事業場内に在籍する産業医や保健師、人事労務担当者によるケア。
④「事業場外資源によるケア」社外の専門家として主治医、カウンセラーなどによるケア。

その中で、最も重要と考えられている「ラインケア」について説明していきたいと思います。

なぜラインケアが重要なのか?

勿論、4分類のどのメンタルヘルスケアも重要です。
その中で、なぜ「ラインケア」が最も重要かと言うと、労働者のメンタル不調の早期発見につながるからなのです。

「セルフケア」においては労働者が自身のストレスに気づき、ケアを行う訳ですが・・・
「ストレスに自覚がない」「ストレスがあっても相談しない」などと言われる方も非常に多くおられます。
例えば
・そもそもストレスと言うものが分からない。
・うつ病などは心の弱い人がなる病気。自分がメンタル不調になるはずがない。
・ストレスは感じているが、自分以上にもっと頑張っている人はたくさんいる。弱音が吐けない。
・誰かを悪く言うような相談しにくい。
・仕事の不満を言ったら評価が下がる。
・プライベートの問題なので会社で相談するのは違うと思う。
などと放置され、メンタル不調になってしまってから、自分の限界を知る方が多くおられます。
このようなことから、「セルフケア」では自ら改善に向けた行動をなかなか起こさないのが現状なのです。
実際に、ストレスチェックで「高ストレス者」と判断されても放置される方が多いですし、健康診断で「再検査」と診断されても放置される方はたくさんおられますよね。

では「事業場内産業スタッフによるケア」や「事業場外資源によるケア」ではどうでしょうか。
もちろんですが、専門家であることから改善に向けた治療やアドバイスを行うことはできますが、日ごろから従業員の方々と接している訳ではないので、従業員の変化に気づくことが難しく、申し出が無い限り対策を行うことはできません。

そこで重要になるのが「ラインケア」なのです。
管理職であれば、日ごろから部下と接していることから、変化に気づくことができます。
以上のことから「ラインケア」が早期発見につながることが多い
と言うことなのです。
しかし、ここで重要なことは、「部下の日ごろの状態を知っておかないと変化に気づけない」と言うことです。
日ごろから部下の言動に興味を持ち、コミュニケーションをとっておくことが大切なのです。

「ラインケア」で管理職はどのようなところに気を付ければ良いのか?

部下がメンタル不調に陥りやすいタイミングを知る
・新入社員、昇進、移動など環境の変化やプレッシャーを感じる変化があった場合は注意が必要です。
・プライベート:結婚、出産、離婚、死別、子供の独立、事故、病気なども気を付けるタイミングです。
ここで気を付けていただきたいのは、ストレスは辛い出来事だけでなく、うれしい出来事もストレスになることを認識しておいていただければと思います。

部下のメンタル不調のサインを見逃さない
・勤怠:遅刻、欠勤 特に週末や週明けに起こりがちになります。
・業務:ミスやエラー、事故、トラブル、物忘れ、作業効率の低下、生産性の低下、集中力の低下。
・アルコールへの依存:朝からアルコール臭い、飲酒の回数や量の増加。
・その他:身だしなみを気にしなくなる、服装の乱れ、人間関係を避ける、ネガティブ発言が多くなる、無表情、体形の変化(急に太る、痩せる)なども不調のサインとなります。

部下のメンタル不調の見極めポイント
・業務に支障をきたしている。
・休日を挟んでもリフレッシュできていない。
・以上の状態が2週間以上継続している。
などを目安としていただけば良いと思います。

部下のメンタル不調を見落としてしまう原因
管理職の方が、自分の価値観や基準で判断しないようにしましょう。
「あれくらいのことで」「自分の時はもっと大変だった」と思っていると、部下の不調を見落としてしまいます。
自分を基準と考えず、個々の違いを受容することが大切です。

部下の変化に気づいた時の管理職の声のかけ方
客観的かつ具体的に、いつもと様子が違うこと、心配していることを伝えましょう。
例)「最近ミスが続いているようだが、何かあったんじゃないかと心配している。良かったら話してくれないか。」
ここで大切なポイントは「いつでも相談に乗るから」と話しやすい関係性を日ごろから作っておくことが大切です。
また、声かけをしても、話してくれない場合もあると思います。その後も部下の様子がおかしい場合は、人事労務担当者などに相談しましょう。

ラインケアで管理職がしてはいけないこと
メンタルヘルスケアにおいて、管理職の方が部下の話を聴くことは大切ですが、解決を目的としないようにしましょう。
管理職の方は、医師や保健師、カウンセラーなどの専門家ではないので、アドバイスが逆効果になる可能性もあります。
例えば、自分の価値観でのアドバイスや「頑張れ!」などの声かけです。
また一番してはいけないことは「部下の了承を得ずに良かれと思い」周囲への共有や働きかけを行うと、個人情報漏洩になることもあり、信頼関係が崩れるだけでなく大きなトラブルになる可能性もあるので注意が必要です。
話を聴いた後は、人事労務担当者などに相談し、専門家に引き継いでもらうようにしましょう。

まとめ

定期健康診断の目的は、「病気の早期発見と早期治療」です。早期発見と早期治療を行えば、軽傷で済むことも多くあります。
メンタルヘルスケアも同様です。
そして、部下のメンタル不調に、いち早く気づくことができるのが、日ごろから部下の近くにいる上司なのです。
しかし、上司が部下の問題すべてを抱え込む必要はありません。そんなことしたら、上司の方がメンタル不調になってしまいます。
部下の不調に気づいたら、病気と同じように、専門家へ繋ぐことが大切なのです。

【文:Nakaya(M&Pラボラトリー/チーフカウンセラー)
資格:キャリアコンサルタント・2級キャリアコンサルティング技能士】
年間1,500名以上のカウンセリングを実施。仕事の悩みだけでなく、プライベートの悩みや生活改善などもアドバイス。「いきいきと働き、いきいきと生きる」ことをサポートします。

参考文献・参考資料
厚生労働省 独立行政法人労働者健康安全機構 職場における心の健康づくり ~労働者の心の健康の保持増進のための指針~
厚生労働省 働く人のメンタルヘルス・ポータルサイト こころの耳

CATEGORY

Favorite