専門知識が無くてもできるカウンセリング『ナラティブアプローチ』  ネガティブ思考のシンデレラから学ぶ 

皆さんは「ナラティブアプローチ」と言うカウンセリング技法をご存じでしょうか?
我々カウンセラーも、カウンセリングの基本技法として取り入れているものですが、
ナラティブアプローチは「無知の姿勢」や「専門性を捨てる」ことが求められる技法であり、さらには「アドバイスしない」と言うものなのです。
「えっ⁉それってカウンセリングなの?」と疑問に思われる方も多いと思いますが、ナラティブアプローチだけでカウンセリングが完結する場合もあり、たいへん重要な技法だと言えます。
また、ナラティブアプローチの凄いところは「無知の姿勢」や「専門性を捨てる」と言うことなので方法さえ理解すれば、専門知識が無くてもカウンセリングできると言うことなのです。
誰かから相談されたときナラティブアプローチ使えば、相談者の悩みを解決する手伝いができるかも知れませんね。
今回はナラティブアプローチを理解しやすくするために「ネガティブ思考のシンデレラ」を例に説明していきたいと思います。

ナラティブアプローチとは

ナラティブとは「物語」「語り」と訳されます。少しファンタジーな感じがしますね。
もう少しイメージしやすく言うと「日記」だと思っていただければ良いと思います。日記なので千人いれば千人の物語があります。また、同じ出来事であっても、人によって受け取り方や考え方が違うこともあります。
例えば、千人のシンデレラがいれば千人なりの考えや感じ方もあるでしょうから、結末も変わってしまうかも知れませんね。

ナラティブアプローチの目的

「支配的な物語のドミナントストーリー」を「代わりの物語のオルタナティブストーリー」に書き換えることを目的としています。

支配的な物語ドミナントストーリーとは
相談者の物語は、事実ではないこともあります。それは「思い込み」や「歪曲」「偏り」などしていることも多くあるからです。しかし、相談者は「これは変えることはできない!」と思い込んでいて、その考えに支配されている物語のことをドミナントストーリーと言います。
ネガティブ思考のシンデレラであれば「綺麗なドレスや靴があったとしても、自分が王子様に相手にされることはない、ましてや愛されるなんて無い!」と思い込んでいるのでしょう。

代わりの物語オルタナティブストーリーとは
ドミナントストーリーの例外的なことを見つけ補強し、「思い込み」や「歪曲」「偏り」に気づき、新たなストーリーに書き換えた物語のことを言います。

ナラティブアプローチでしてはいけないこと

ナラティブアプローチの進め方を説明する前に、ナラティブアプローチでしてはいけないことを先に説明したいと思います。
相談されたあなたは、相談者の「思い込み」や「歪曲」「偏り」に気づくことがあると思います。しかし、ここで否定したりアドバイスしてはいけません。それはあなたの価値観であり、相談者の価値観ではないからです。
また否定やアドバイスするには、理由や根拠が必要になってきます。理由や根拠が必要と言うことは「無知の姿勢」や「専門性を捨てる」ことになっていないのでナラティブアプローチでは無くなってしまいます。
ネガティブ思考のシンデレラに対して「あなたの消極的な考えは間違っている!」などや「人は行動した後悔よりも、行動しなかった後悔の方が深く残るって心理学者が言っている!」などのダメ出しやアドバイスはナラティブアプローチではありません。

ナラティブアプローチの進め方

問題の外在化をする
問題の外在化とは、相談者が問題を客観視できるように「言語化」「名前を付ける」「見える化」などをすることを言います。例えば「この話にタイトルをつけるとしたら?」などの質問をしてあげてください。
ネガティブ思考のシンデレラであれば「最初から諦めているシンデレラ」なんて、タイトルを付けるかも知れませんね。
タイトルを付けることにより、頭の中でモヤモヤしていたことが、客観視できるようになり、問題も明確になります。

相談者に反省的な質問をする
反省的な質問とは、事実確認の質問になります。
「誰が?」「どんな出来事が?」「どんな経験が?」などの質問になります。例えば「具体的に誰があなたを嫌っているの?」「誰かに言われたの?」などです。
この際「ネガティブな思考を直してあげたい」と接するのではなく「教えてもらう」「一緒に考える」と言う関わり方で接してください。
ネガティブ思考のシンデレラであれば
あなたからの質問:「王子様に相手にされない、愛されないって誰かから言われたの?」
シンデレラ:「継母や義理の姉たちに言われた」
あなたからの質問:「他の人からも同じことを言われるの?」
シンデレラ:「亡くなった父や母からは、アナタは誰からも愛される優しい娘だと言われていた。ネズミ達からも同じことを言われる」

とこのように、ドミナントストーリーの例外的な部分を補強していくことが、オルタナティブストーリーに書き換えていくことなのです。

まとめ

シンデレラは、あなたが行ったナラティブアプローチのおかげで、自分の「良い評価」や「良い面」に気づくことができ自分に自信が持てるようになったかも知れません。また、他人から言われたことでなく、自分で気づいたことに関しては、人は行動に移しやすくなります。

私たちは、妖精のように魔法で、シンデレラに綺麗なドレスや靴を与えることはできません。しかし、どれだけ綺麗な身なりになっても、ネガティブ思考のシンデレラのままでは、王子様とダンスをする勇気はなかったかも知れないですね。

このように、ナラティブアプローチは、専門知識を必要としないカウンセリングです。相談者が悩んでいることも、ナラティブアプローチで関わることにより、相談者自らが、問題や原因に気づき、自ら改善策に向かうこともよくあります。誰かから相談されたときにナラティブアプローチを試していただければと思います。
また、自分自身の悩みや問題も、ナラティブアプローチで考えてみると、解決の糸口が見えたり、ストレスが軽減することもありますので是非試してみていただければと思います。

【文:Nakaya(M&Pラボラトリー/チーフカウンセラー)
資格:キャリアコンサルタント・2級キャリアコンサルティング技能士】
年間1,500名以上のカウンセリングを実施。仕事の悩みだけでなく、プライベートの悩みや生活改善などもアドバイス。「いきいきと働き、いきいきと生きる」ことをサポートします。



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