(童話)裸の王様から考える「同調圧力」 

今回は“(童話)裸の王様から考える「同調圧力」”について説明したいと思います。
先ずは、ご存じだと思いますが「裸の王様」のあらすじをおさらいしていきましょう。

裸の王様(あらすじ)

ある国の王様が、衣装を新調するために国中の仕立て屋をお城に呼び寄せました。
その中に「愚か者には見えない布地で衣装を作る」と言う、詐欺師の仕立て屋が紛れ込んでいました。
王様はその仕立て屋に、衣装を注文することにしてしまいました。
しばらくして、王様は大臣に衣装の出来具合を見に行かせました。
大臣には衣装が見えませんでしたが、王様に「見えませんでした!」とは報告できず「立派な衣装です・・・」とウソの報告をしました。
その後、他の家来たちも見に行かせましたが、大臣と同様に見えない衣装のことを称賛して王様にウソの報告をしました。
完成した衣装が王様のもとに届きましたが、王様にも衣装は見えませんでした。
しかし家来たちに見えて自分に見えないとは言えず、王様も衣装を褒めたたえました。
王様は見えない衣装を着て、お披露目のパレードを行うことになりました。
民衆も見えない衣装を称賛していましたが、一人の子供が「王様裸だよ!」と言ったのをきっかけに、民衆はざわめきたち「王様は裸だ!!」と言う声とともに笑い声が広がっていきました。

と言うのが、皆さまご存じの「裸の王様」の物語です。
さて、皆さんはどう思われましたでしょうか?
自分なら「衣装は見えません!王様は裸です!」とハッキリ言えるよ!と断言できますでしょうか?

この物語のように、他人の意見に流されてしまうことを「同調圧力」と言います。

心理学の分野では

1951年アメリカの心理学者ソロモン・アッシュによる実験が行われました。
「知覚に関する実験」とのことで8人の被験者が集められました。
出題された問題は「見本と同じ長さの線をABCの中から選びなさい」と言うものでした。

見本:_______
A :______
B :_______
C :________

皆さんはどれが正解だと思いますか?
そうです!答えは「B」です。
しかし、実験では7番目の回答者であるあなたの前の6人全員が「C」と回答していました。
いかがでしょうか?あなたは自信をもって「B」と回答することができますか?
実はこの実験は「人はどれだけ同調圧力に流されるのか?」と言う実験で、あなた以外の被験者は全員サクラなのです。
この実験の結果、32%の人が同調圧力に流され「C」と回答したそうです。
たとえ「B」と回答した人でも、多少なりとも迷いが生じていたなら、同調圧力の影響を受けていたと言うことになります。

同調圧力とは

同調圧力とは、英語ではpeer pressure(ピア プレッシャー)と言い、直訳すると「仲間からの圧力」となります。
集団の中で多数派からの無言の圧力に押されて、少数派が多数派の意見や行動に合わせてしまうことを言います。
同調圧力の問題点は、多数派の意見や行動が間違っていることに少数派が気づいていても、多数派に合わせてしまうことにあります。
自分が多数派に属することで安心感が得れると言うこともありますが、孤立や仲間外れに合わないための防衛思考が働いての行動だと言えます。
なお、日本には古くから「和を重んじる」や「長いものには巻かれろ」また「空気を読む」などの言葉からも分かる通り、同調圧力が強く根付いた国民性であると言われています。

このような同調圧力ですが、メリットとデメリットの両側面があります。

同調圧力のメリット

同調圧力のメリットはルールや秩序が守られる!協調性が生まれる!ことにあります
・例えば、コロナ禍において日本人のマスク着用率は、世界一と言えるでしょう。
これも、マスクをしていないと周囲から白い目で見られると言う同調圧力からのことですが、感染予防の観点からはメリットと言えます。
・また、日本人は天災などで被災した際、配給品の受け取りに順番を守り秩序を乱さないようにします。これも同調圧力が根付いている日本だからこその行動と言えるでしょう。他国では奪い合いになることも多く、この日本人の行動は世界中から称賛されています。
・他にも、ゴミのポイ捨てが少ないのも同調圧力のメリットと言えるでしょう。皆がキレイにしている場所にゴミを捨てにくいと言う同調圧力が働いています。外国人からは、街頭にゴミ箱が無いのにゴミのポイ捨てがされていないことに驚きがあるようです。
近年では、スポーツイベント後のスタジアムのごみ拾いを日本人が行ったことが称賛され、他国のサポーターにも広がってきています。今はまだ少数派かも知れませんが、いずれ多数派になれば、ゴミ拾いだけでなくゴミを捨てない文化も世界中に定着していくかも知れませんね。
・他にも、公衆トイレなどの貼り紙のコメントなどにも同調圧力が利用されています。以前であれば「トイレを汚さないようにしましょう」と言う感じでしたが、最近では「いつもキレイに使ってくれてありがとうございます」の様に、キレイに使っているのが多数派のような文言に変わっています。

このように「皆が守っているルールだから自分も守る」「協力し合う」「助け合う」など多数派が行っている良い行動については、一定の社会秩序や治安を維持でき、同調圧力のメリットと言えます。

同調圧力のデメリット

・自分の意見を言わなくなる
心理学者ソロモン・アッシュの実験からも分かるように、間違いに気づいても、周囲に合わせて自分の意見を言わなくなることがあります。「長いものには巻かれろ」や「忖度」などもまさにそうだと言えるでしょう。
しかし、企業の場合、従業員が何も言わなくなると、内部からの情報が経営層に伝わらなくなり、企業にとって大きなリスクとなります。
また「意見を言わない」「行動しない」ことは「指示待ち人間」が増えることにもつながります。
日頃から、従業員に発言の機会を与えたり、発言しやすい環境づくりなどの取り組みも重要だと言えます。
・いじめや仲間外れの助長になる
いじめ問題の助長は「保身」のため不本意な同調を起こしてしまうことにもあります。いじめを受けている人のことを、自分が嫌っていなくても、一緒になっていじめたり、見て見ぬふりをしないと、今度は自分がいじめのターゲットにされるのでは?と言う保身から同調圧力が働きます。
また、いじめを繰り返しているうちに、多数派に属している安心感などから、罪悪感がマヒしてしまうことも懸念されます。

更なる同調圧力のデメリット「正義感の暴走」

更なる同調圧力のデメリットは「正義感の暴走」があります。
「俺たち(俺)が我慢しているから、お前も我慢しろ!我慢できない者には制裁を!」と言う、行き過ぎた正義感です。
コロナ禍においては「マスク警察」や「自粛警察」などもそうでしょう。国の方針に合わせて営業していた飲食店に、心無い内容の貼り紙がされたり、ガラスが割られたりしたのも記憶に新しいことだと思います。
また「ルールを守らない人がいるのに自分だけが我慢するのはばからしい」と言うのもあります。
少数派の行動かも知れませんが、自分がルールを破ることを正当化するために、いかにも多数派が行っているかのように都合よく解釈してしまいます。
例えば、ゴミの不法投棄なども、誰かが捨て始めたのをきっかけに「自分だけじゃない!みんなやってる!」と多数派意見のようにして正当化しようとします。

同調圧力への対策

同調圧力のメリットについては、先にも説明した通り、一定の社会秩序や治安を維持できることも多く、無理のない程度で同調するのは良いことだと思います。
問題は同調圧力のデメリットに対してです。
多数派を否定したりすると、あなたに矛先が向くことや、裏切者扱いされることが心配されると思います。
先ずは冷静になり、同調したことが自分にとって不本意なことではないのかを考え、不本意なことに同調してしまっていることに気づくことが大切です。
そして、間違った同調圧力を発信している人たちとは「少し距離をおく」また「あなた達はそう考えているんですね」と否定も共感もしないぐらいにしておくのが無難だと言えるでしょう。
大切なのは「あなたから間違った同調圧力が広がらない」ことなのです!

まとめ

いかがでしたでしょうか?あなたには王様の衣装は見えましたか?
心理学者のソロモン・アッシュは「誰かが正しい意見を言うと、同調圧力は崩れていく」と言っています。
まさに裸の王様では、子供が発した「王様裸だよ!」がそうだと思います。
一度、ご自身の同調圧力について考えてみられるのも良いのではないでしょうか。


【文:Nakaya(M&Pラボラトリー/チーフカウンセラー)
資格:キャリアコンサルタント・2級キャリアコンサルティング技能士】
年間1,500名以上のカウンセリングを実施。仕事の悩みだけでなく、プライベートの悩みや生活改善などもアドバイス。「いきいきと働き、いきいきと生きる」ことをサポートします。



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