何もやる気が起こらない⁉学習性無力感は伝染する‼

皆さんは「何もやる気が起こらない」と言う無気力な状態になってはいないでしょうか?
また、過去にそのような経験はありませんでしょうか?
その無気力の原因・・・ひょっとしたら「学習性無力感」かも知れません。

学習性無力感とは

学習性無力感とは「回避不能なストレスに長期間置かれると、何をしても無駄だと学習してしまい、抵抗することや逃れること、また自発的な行動をしなくなる状態」のことを言います。

アメリカの心理学者マーティン・セリグマンが、1967年に動物実験を行い「学習性無力感」を実証しました。
犬を二つのグループに分け、双方に電気ショックを与えます。
Aグループの犬には、電気ショックをOFFにすることができるスイッチを置き、犬は学習してスイッチをOFFにするようになりました。
Bグループの犬には、スイッチが無く、電気を切ることができず、電気ショックを耐えるしかない環境に置きました。
その後、両グループの犬を、飛び越えることができる低い策の中に移動させ、その策の中にだけに電気が流れるようにしました。
Aグループの犬は、電気が流れると策を飛び越え、電気ショックを回避しましたが
Bグループの犬の多くは、策から出ること無く電気ショックを耐え続けました。
セリグマンは、この実験でBグループの犬の行動を「学習性無力感」として提唱しました。

その他にも、象使いの象の調教では
子象の時から、足に鎖を巻いて杭に繋ぎます。
そして、子象は逃げられないことを学習します。
その後、大人になった象は、力が強くなっても逃げることをしないそうです。
この象の行動も、学習性無力感と言えます。

人間にも起こる学習性無力感

勿論ですが、学習性無力感は、人間にも起こります。仕事や勉強・スポーツなどでも悪い結果や悪い環境が続くと学習性無力感に陥ります。
学習性無力感の懸念されるポイントは、きっかけとなったことだけが、うまくいかなくなる訳ではなく、自信を喪失してしまうことから、他のことや、今まで出来ていたことまで出来なくなってしまうことです。
なお、成人の8割以上が、何らかの学習性無力感を経験していると言われていますので、皆さんも思い当たる節はあるのではないでしょうか?

職場における学習性無力感

労働者が学習性無力感に陥ってしまうとどうなるのでしょうか?
・パフォーマンスの低下
・モチベーションの低下
・積極性が無くなる
・自分の意見を言わなくなる

などがあげられます。
これだけでも企業にとっては大きな損失ですが・・・

健康にも悪影響を及ぼす

「病は気から」とも言われる通り、学習性無力感は健康にも悪影響を及ぼします。
うつ病などの精神疾患になり、休職や退職のリスクが高くなることは想像していただけると思いますが、併せて、免疫力も低下し、感染症や成人病などに罹患するリスクも上がります。
また、死亡率も20%増加し寿命が短くなるとの研究結果もあります。

「学習性無力感」は伝染する

さらに、学習性無力感は周囲の人に伝染してしまうことも懸念するポイントです。
学習性無力感に陥った人と、周囲の人が同じ環境であることも要因ではありますが、誰かが学習性無力感に陥ると「あの人が無理なんだから、自分も無理だろう」と、他人の経験を自分の経験のように代理経験してしまい、直接経験していなくても学習性無力感に陥ってしまうことがあります。

このようなことからも、学習性無力感が仕事や健康に与える影響は無視できるものではありません。

学習性無力感の改善対策

先ずは、学習性無力感がどのような職場環境で起こりやすいかを知ることが肝心です。
学習性無力感の起こりやすい職場環境
・ハラスメントが行われている
・継続して否定される
・成果を実感できない
・褒められることがない
・方針や目標が明確でない
・相談できる環境がない
・コミュニケーションが取れていない

などがあげられます。

学習性無力感に陥りにくい職場環境
・ハラスメント対策が取られている
・方針や目標が明確であり、成果や達成感を実感できる
・認められたり、褒められる環境がある
・相談できる環境がある
・コミュニケーションが取れている

などです。当然ですが陥りやすい環境と真逆になります。

学習性無力感の起こりうる環境である場合は
状況把握し、原因を明確にし、会社全体で意識を持ち、改善に取り組む必要があります。

ハラスメントが原因の場合は、改善対策を行うことが法律で義務化されていますので、早急に対策を講じる必要があります。
厚生労働省HP/職場におけるハラスメントの防止のために(セクシュアルハラスメント/妊娠・出産・育児休業等に関するハラスメント/パワーハラスメント)

「学習性無力感」に陥ってしまっている人の改善方法

成功体験を積む
成功体験を積むことで自信を回復させることです。
しかし、この成功体験は、大きな目標をたてるのではなく、小さな目標にして成功体験を積み重ねることです。いきなり大きな目標では、失敗するリスクも高くなりますし、成功したとしても時間を要してしまいます。小さな目標で、なるべく短期間で成功体験を積み自信を取り戻すようにしていきましょう。
どうしても、大きな目標をたてないといけない場合は、節目節目にゴール地点を設けると良いでしょう。
例えば登山を始める場合、いきなりエベレストを目標にはしないと思います。それは誰が考えても失敗することが分かっているからですよね。最初は低い山から登頂し、成功体験と経験を積み重ね、エベレストにチャレンジされるものだと思います。

代理経験をさせる
代理経験とは、うまくいっている人と話したり、また見たり聞いたりするだけでも「自分にもできるんじゃないか!」「あの人ができたんだから!」と自分にも自信が持てるようになると言うものです。
ただし、あまりにも自分とレベルが違い過ぎる人だと実感が持てないので、自分とレベルが近い人を対象とすることです。
また、代理経験で注意しなければいけないことは、うまくいっていないことも代理経験してしまうので、ポジティブでうまくいっている人を対象にすることです。

記憶の仕組みを知る。
記憶の仕組みを知ることも、成功体験を記憶する上で重要なポイントとなります。それは、人間を含む生物は、成功体験よりも失敗体験の方が鮮明に記憶に残るようにできているからなのです。つまり、失敗体験が鮮明に記憶されていなければ、同じ失敗を繰り返し、場合によっては生死にかかわることを繰り返してしまうかも知れません。そのため失敗は鮮明に記憶されるのです。
このことを理解しておくだけでも意識は変わってくると思います。
さらに「成功体験日記」をつけ定期的に読み返すことをすれば、成功体験を上書きすることができます。

まとめ

いかがでしたでしょうか?
今回は、学習性無力感について職場を中心に説明させていただきましたが、学習性無力感は、職場だけでなく、家庭・子育て・勉強・スポーツなど様々なライフステージで起こります。
しかし、学習性無力感に陥っている自覚がない場合もあります。
「気力がない・・・」「何をやっても自信がない・・・」などの場合は何が原因なのか?学習性無力感の見地から考えてみると、解決の糸口が見えてくるかも知れませんね。
また、自分が誰かの学習性無力感の原因にはなっていないか?と一度考えてみるのも大切なことだと思います。


【文:Nakaya(M&Pラボラトリー/チーフカウンセラー)
資格:キャリアコンサルタント・2級キャリアコンサルティング技能士】
年間1,500名以上のカウンセリングを実施。仕事の悩みだけでなく、プライベートの悩みや生活改善などもアドバイス。「いきいきと働き、いきいきと生きる」ことをサポートします。

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