「他人の不幸は蜜の味」は人の本能? シャーデンフロイデ
シャーデンフロイデとは
「他人の不幸は蜜の味」また「他人の不幸でメシがうまい(メシウマ)」など、他人の不幸を「ざまあみろ」と喜びに感じた経験は、多くの方があるのではないでしょうか?
心理学の分野ではこの感情を、シャーデンフロイデと言い、ドイツ語の「Schaden(損害)」と「Freude(喜び)」が組み合わさった言葉となっています。
直訳すると「他人の損害を喜ぶ」となります。
このシャーデンフロイデは、自分に有害な人に対しては特に強く感じますが、自分に無害な人に対しても感じる感情です。
また、自分よりも優位性が高い人に対しても強く感じますが、自分よりも優位性が低いと思っている人に対しても感じる感情なのです。
つまりは、自己防衛的な感情だけではなく、自分の快楽のために感じる感情でもあるのです。
そして、このシャーデンフロイデは特別な感情ではなく、多かれ少なかれ誰もが持っている正常な感情だと言われているのです。
シャーデンフロイデは必要な感情
しかし、シャーデンフロイデは他人の不幸を喜ぶ感情なので「そのような感情を持つことは道徳的に良くない」と思われる方も沢山おられるのではないでしょうか?
しかし、シャーデンフロイデは、人類が生存競争で生き残るためには必要な感情だったとも言われているのです。
人類は、他の動物のように、爪や牙も無く、早く走ることや、空を飛ぶこともできません。そのため人類は、集団生活で身を守ることを選択したのです。
そして、集団生活を行うにはルールが必要となり、そのルールを守らない人が出てくると、集団自体が危険にさらされることにもなってしまいます。
ルールを守らない人を見つけ排除し、そして集団が守られることは喜ばしいことだったことでしょう。
また「次は自分が排除されないように」と抑制効果にもなっていました。
シャーデンフロイデが、集団を維持するために芽生えた感情だと言われるゆえんなのです。
またそれ以外にも、シャーデンフロイデが「相手を超えてやろう」との向上心や自己成長、モチベーション向上のきっかけとなるのも事実です。
文化や社会の発展には必要だった感情だとも言えます。
さらに、メンタル面では「喜ぶ」と言う感情はストレス発散になっていたとも言えます。
シャーデンフロイデの特徴
①他人の不幸の原因が、間抜けなしくじりであれば、喜びを強く感じる。
②他人の不幸の原因が、天災など深刻で悲惨な状況であり、第三者が同情するような不幸には、喜びを感じない。
③自分が、他人の不幸の直接の原因にはなりたくない。
このように、自分が直接手を下さず、後味が悪いことまでは望んでいないのがシャーデンフロイデの特徴と言えます。
しかし、自分に危害を加えてくる相手に対しては、リベンジ(報復)となり、直接手を下したり、悲惨な状態に陥ることを望む場合もあります。
シャーデンフロイデの問題点
①快楽を伴う
シャーデンフロイデは「蜜の味」や「メシウマ」とも言われるように、最大の問題点は、快楽を伴うことです。また、快楽には中毒性があり繰り返し求めてしまいます。そのため簡単にシャーデンフロイデが得られる、芸能人のスキャンダルや、ドッキリ番組などのニーズが高くなっているのです。また、同じ快楽では満足できなくなるため、さらに大きな快楽を求める傾向もあります。付け加えると、快楽は時間やお金をかけてでも得たいものなのです。
②同調圧力がはたらく
他人の不幸に対して、本来の自分は「同情」していたにもかかわらず、周囲の大多数の人が面白がっていると、その場の空気に流される「同調圧力」がはたらき、一緒になって面白がってしまうことがあります。問題点は大多数と同じ感情である安堵感から、疑問を持たなくなってしまうことなのです。
自ら他人を攻撃してシャーデンフロイデを得ようとする場合
①他人との比較
例えば、同僚の給料が上がることは、自分の給料が下がることと同等に不幸に感じると言われています。自分のモチベーションが低下するだけに留まらず、攻撃をしてしまう場合もあります。
②他人の足を引っ張る
シャーデンフロイデが良い方向に働いた場合は、他人を追い越そうと自己成長のきっかけになりますが、悪い方向に働いた場合は、自分が成長するのではなく、他人の足を引っ張ることで自分を優位に立たせようとします。
③正義感の暴走
例えば、コロナ禍においては「マスク警察」や「自粛警察」など、社会正義の名のもとに犯罪行為にまで及んでしまうこともあります。自分が正しいとの大義名分から罪悪感は低下してしまいます。
④SNSの匿名性
インターネットの台頭は、シャーデンフロイデに拍車をかけています。ネットを介しての距離感や匿名性から罪悪感も薄れ、安易に誹謗中傷を発信してしまいやすくなるので注意が必要です。また、SNSが無かった時代は、少数のコミュニティのため、攻撃的な意見を言っても、共感する人は少なかったことでしょう。しかし、SNSのコミュニティでは利用者が比較にならないほど多いため、少数でも共感する人が出てきてしまう可能性あります。これにより自分の意見が支持されていると思い込みが生じてしまいます。しかし、理解していただきたいことは、コミュニティの分母の違いです。自分と同じように攻撃的な意見に共感する人が多数存在するわけではなく、少数の共感者に過ぎないことや、また、面白半分に共感する人がいることも理解することが重要なのです。
まとめ
シャーデンフロイデは、人間の自然な感情の一つです。
集団においてルールや秩序を守るために必要であり、向上心のきっかけや、ストレス発散にもなっているのも事実です。
しかし、他人の不幸に対して快感を感じることは、倫理的に問題があるとされることもあります。
そして、多くの人は、他人が不幸になったときに、同情や思いやりを示すことが一般的です。
逆の立場で、自分自身が不幸な状況に陥った際に、他人がシャーデンフロイデを感じていると考えると、倫理的には慎むべき感情であると言えます。
したがってシャーデンフロイデを感じたとしても、それを無条件に受け入れるのではなく、その感情を自己観察し、この感情が誰かの影響を受けていないか?本来の自分の感情なのか?自分自身の感情について考える機会を持ち、自分のコントロール下におくことが大切なのです。
また、小さな子供が自己中心的なのは仕方がありません。大人が見本となり教えていくことが必要なのです。そのためには、大人が日頃から倫理をもって発言や行動することが大切だと言うことなのです。
そして、シャーデンフロイデと良好に付き合うためには、他人の幸せを、自分のことのように喜ぶことができるのが一番良いことなのかも知れませんね。
- 【文:Nakaya(M&Pラボラトリー/チーフカウンセラー)
資格:キャリアコンサルタント・2級キャリアコンサルティング技能士】
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